English Sources Report
国内では「新しい広告枠が解禁された」という前向きな話が中心ですが、Digiday・Search Engine Landといった英語圏の業界メディアは、もう少し複雑な実態を報じ続けています。配信不足、実測パフォーマンス、業種別の極端な差——数字を知った上で出稿を判断するための一次情報を、出典付きでまとめました。
Digiday Podcast(2026年6月2日)は、ChatGPT広告のパイロット広告主の間で「配信不足(アンダーデリバリー)」が深刻な問題になっていたと報じています。一部の広告主は$250,000のコミットメントの10分の1すら消化できない時期があったとされ、業界ではこの状態を「marketing budget purgatory(マーケティング予算の煉獄)」と呼んでいたそうです。
その後の改善で配信率は30〜50%向上したとされますが、同じ報道では「依然として広告枠の半分以上が未充填」という証言も紹介されています。それでもパイロット広告主が離脱しない理由について、Digidayは端的に「FOMO(取り残される恐怖)」だと分析しています。「早く入れば有利」という単純な期待だけで判断すると、実際には出したくても出せない予算が発生しうる、という点は事前に知っておく価値があります。
Search Engine Land が2026年8月10日に公開した実践ガイドでは、ある実案件のデータとして、ChatGPT広告とGoogle検索広告のパフォーマンスを直接比較しています。
同記事は「新しいチャネルは立ち上がり期にパフォーマンスが弱く出やすいが、他のチャネルでは届かない層にリーチできる」という文脈も添えています。とはいえ、コンバージョン率で18倍近い差がある事実そのものは変わりません。ターゲティングもキーワードやデモグラフィックではなく「context hints(文脈ヒント)」という自由記述ベースの仕組みで、広告主は個々の会話データにアクセスできないため、Google広告の運用感覚をそのまま持ち込むと期待とのギャップが生じやすい設計になっています。
SEOツールベンダーのSE Rankingが5万件超の商用プロンプトを20業種にわたって分析した調査(Search Engine Land、2026年8月10日)によると、ChatGPT広告の全体表示率は25.94%でした。GoogleのAIモード(29.45%)に迫る水準ですが、注目すべきは内訳です。
表示された広告のうち約14.35%はプロンプトの文脈と無関係と判定されています。業種別の差も極端で、Pets(ペット)カテゴリでは2.6%しか表示されない一方、Relationships(人間関係)やNews & Politics(ニュース・政治)では50%を超える表示率を記録しています。ヘルスケア関連プロンプトでは28.69%に広告が表示されており、これはGoogle AIモードの2.64%と比べて突出して高い数字です。YMYL(健康・お金など生活に影響の大きい領域)における広告表示の扱いが、プラットフォームによって大きく異なることがうかがえます。
さらに同調査では、広告を出稿している企業のうちオーガニックな引用(citation)にも同時に載っているのはわずか3.63%だったと報告されています。「広告を出せばAIの回答内で自社が言及されやすくなる」という期待とは裏腹に、広告出稿とオーガニック露出はほぼ連動していないというデータです。
OpenAIは2030年までに広告事業で$1000億規模を目指しているとされますが、調査会社Emarketerの試算(Search Engine Land、2026年7月14日)はかなり異なる数字を示しています。ChatGPT・Copilot・Google AIモード・Alexa for Shoppingを含む米国のスタンドアロン・チャットボット広告市場全体でも、2030年時点で$54.1億にとどまるという予測です。OpenAI単独の目標との差は約90%に達します。
短期目標についても、2026年の社内目標$25億に対し、Emarketerは$10億未満にとどまると予測しています。営業トークをそのまま鵜呑みにせず、独立した調査機関の見立てと突き合わせておくことは、出稿判断の材料として有用です。
Digiday(2026年7月30日)は、OpenAIが新規広告主向けに$50〜$100のプロモクレジット施策を始めたと報じ、これを「クーポン段階(coupon stage)」と表現しました。Google広告やMeta広告が黎明期に使った「無料クレジットでまず試させる」成長戦術と同じ構図です。
Accuracast社CEOのFarhad Divecha氏は同記事で「$100規模のクレジットでは効果は限定的だが、$500〜$1,000規模であれば、適切な広告主にプラットフォームの利点を認識させる効果があるはずだ」とコメントしています。この動きは、ChatGPT広告が「実験段階」から「本格的な顧客獲得競争の段階」へ移行しつつあることを示すシグナルとして読めます。
ここまでの数字を並べると、ChatGPT広告に慎重になった方がよいように見えるかもしれません。ですが当社の立場は「だから今すぐ始めるべき」でも「だからやめておくべき」でもありません。配信が不安定でコンバージョン率も現時点では低いという事実を理解した上で、少額から試すかどうかを判断すべきだと考えています。
最低出稿額は撤廃され、日予算$25程度からテストできる環境が整っています。大きな予算を最初から投じるのではなく、小さく試して数字を見て、効果が薄ければ早期に撤退する。逆に自社カテゴリで表示率や反応が良ければ、そこから段階的に拡大する。これが、配信不足やパフォーマンスのばらつきが報告されている現状に対して、もっとも実務的な向き合い方だと考えています。
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